【心霊・幽霊話】数珠を手放せない理由【#恐怖体験】【#怖い話】【#夏のホラー冬のホラー】

僕が中3のときの話です。

富山県の田舎で暮らしていた僕は中学卒業後、埼玉に上京することを決めていました。
都会の憧れもありましたが、友達と離れることになるのは寂しかったです。
友達のTは僕のそんな気持ちを察してくれたのか「心霊写真でも撮りに行こうや」と誘ってくれました。
僕の町には心霊スポットといえるものが一つだけあったからです。

心霊スポットといってもちいさな空き家なのですが、いろいろな噂があったわけでもなく、なぜかその家は心霊スポットとされていました。
その家の周りはフェンスが囲ってあって、地元の人達が時々見回りに来ています。
僕はなぜ地元の人が見回っているのかは全く分かりませんでした。
ほとんどの人は分かってなかったと思います。
そういうことが重なり、その空き家は心霊スポットとして知られるようになりました。

僕とT、そしてKとSをいれ空き家に向かいました。
いくら地元の人が見回りをしてるといっても、全く入れない訳ではありませんでした。
僕たち4人は容易にフェンスを乗り越え空き家に向かいます。
空き家には鍵は掛けられておらず、簡単に入ることができました。
中はとても埃っぽいことだけは覚えています。

「めちゃきっしょいわぁ」というと、ズカズカとSは玄関を通り、正面のドアに手を掛けてはいりました。
その次に僕らは「写真とらんとな」と雑談をしながら居間らしき所に入りました。
するとSが「うっ」と、うめき声をあげ立っています。
そして、後から来た僕たちも息を飲みました。

居間には一面に(ちぃちゃん)とクレヨンなようなものでびっしりと書かれていました。

「これはやばいなぁ~」と僕が半分強がりでいうと、突然Sが大声を上げました。

「S!声だすなや!!」とTが言った途端、Sが大声をあげた意味が分かりました。
さっきまでいなかった場所に女の子が座っていました。

血だらけではありませんでしたが、明らかにヤバイという感じがヒシヒシと伝わってきました。

Tが「に、逃げ・・・」と途切れ途切れに言い僕の服をひっぱります。
KがSを連れ戻そうとしましたが、Sが固まったように動きません。

Sがポツリと「ちぃちゃん・・・・・・」と言ったかと思うと「ちぃちゃん、ちぃちゃん、ちぃちゃんん!!」と叫び声をあげました。

いつしか女の子の目線はSに向いてます。

その時「なにしとんがだー!」と見回りをしていた人がSの声を聞いたのか助けに来てくれました。

見回りの人はSを抱きかかえると僕たちを睨み「逃げんかはよぅ!!」と言い、玄関へと向かいました。

僕たちも逃げようと玄関へ行くと、女の子がすっくと立ちあがりました。
女の子の動き一つ一つが恐怖に感じてきます。

すると、Kが突然尻餅をつき「痛いぃ!!」と泣き始めました。
見ると女の子がKの長い髪をひっぱっていたのです。

もう女の子にはさっきの面影はなく、髪の毛が半分位抜け落ち肌は黒こげになっていました。
見回りの人は僕とTを抱きかかえ、玄関に向かおうとします。

「Kがあぶない」と絞りだすように言うと「あのガキはダメだ」と見回りの人は涙声で戸を閉めました。
僕たちは髪をひっぱられ泣き叫ぶKを置いて来てしまったのです・・・。

僕とSは大人に叱られ、中3だというのに泣いていました。
大人の注意で泣いたわけではありません。

おそらく「ちぃちゃん」という名前の女の子に僕たちは怯えていました。
そのあと助けにいった地元の人の話では、Kは髪の毛が抜け落ち尿をもらして倒れていたそうです。
KもSと同じく精神病院に入れられていたのですが、突然発狂して死んだと聞きました。

Tはその後、Tの両親といっしょに僕の家まで謝りに来て、一週間後、僕とTはお寺に行きお払いをして貰うことになりました。
一通りお払いが終わると、お坊さんは僕たちに話してくれた。

「君たちは髪を切りなさい。そして、できるだけここから遠くまでいきなさい。霊が君たちを諦め元の場所に戻るまでね。」

お坊さんはそれ以上何も言いませんでした。
僕と同じくTも上京する予定だったので、卒業式が終わった後、荷物をまとめこの町を出ました。
Tは最後に「ごめんなさい」と涙ながらに謝ってきてくれました。

上京して6年後、都会で色々なことがあり、少しずつあの日のことは忘れていきました。
いえ、忘れるように努力してきました。

有る日仕事で疲れ、家に戻ると携帯電話が鳴りました。
母からの電話で「今度のお盆に戻ってきなさい」と言われ、あのことを思い出しました。

お盆に富山に戻ってきました。
あのことが何度もかすめ、気分が悪くなるのが分かります。
戻ってくるなり母は、シワの増えた口を開きました。

「S君と、あんたを助けてくれたおじさんが亡くなられてよ。」

何か重いものがのしかかった様な気がしました。

母の顔はこの6年間でしわくちゃになっていました。
息子の僕の安否が気がかりだったのか、手首には数珠などがいくつも巻かれていました。
母の言いたいことは分かりました。
次にあの女の子に憑かれるのは、T君か僕なのだと言いたいのでしょう。
僕は恐怖を押し殺し「大丈夫やちゃ」と母にいいました。

この6年間、様々なことがあったそうです。
僕とTが上京したあと、僕たちを助けてくれたおじさんはSに「お前らさえおらんければ!」とSに暴力を振るったのだそうです。
容態がよくなってきたSは、その後、激しい自責の念にかられ自殺したのだそうです。
おじさんもお坊さんの言う通り、頭を丸め毎日お経を読んでたのだそうですが、1年前Sと同じように「ちぃちゃん」と叫びながら亡くなられたと聞きました。

僕が煙草に火を付けると「あんたが煙草吸うとはな」と母が笑ってくれました。
もうこんな話もできなくなるかもしれないのだ、と思い目に涙が浮かんできました。
自分の死期がすぐそこまで迫ってくる恐怖感を拭うように、煙を肺に深く入れていたことは覚えています。

母は「T君もここにきとるよ。午後からいっしょお寺にいきなさい」と言いました。
「なーん、(いや)もう行ってくる」と、僕は重い腰を上げ、Tの家に足を運びました。

Tの家に着くと「お前も丸坊主か」と耳にピアスをしていたTは笑い、僕を迎えてくれました。
TもSとおじさんのことを聞き、少なからず動揺しているようでした。

しばらくしてお寺に行くと、あのお坊さんはいませんでした。
僕より少し年上の若いお坊さんが「今は自宅で老後を過ごしてるよ」と笑って言いました。

「親父のあとを継いだんだよ」といった今のお坊さんは僕達のことを知っているのか、「あそこにはいった子か」と聞いてきましたが、なぜか「いいえ」と短く答えてお寺を後にしました。

すると「ピアスしてない方の人」と呼び止められました。

僕は「なんですか?」と聞くと小さい声で「向こうの人、ヤバメの憑いてるよ。小さい女の子。」

背中にサーっと冷や汗をかきました。
それから前にお祓いをしてもらったお坊さんの家に行き、一通りのお祓いをしてもらいました。

しかし僕はそれどころではありませんでした。
隣にあの女の子が居ると思うと体の震えが止まりませんでした。
Tと別れるとき、僕は言い出そうとしましたが、ある疑問がよぎったのです。

「今言ったら憑かれるのは僕ではないのか?」

しかし今言わないとTは女の子に殺されてしまう。
Tは僕を不思議そうに見つめます。
僕は母からもらった数珠をすべてTに渡しました。

僕は言わなかったのです。

それはTを見殺しにするのと一緒でした。
Tは「うん、ありがとうね」と言うと、別方向へと足を進めました。
「T、すまん」と心の中で叫ぶと、あることに気付きました。

Tから出ていた、禍々しいとも言える気が消えていたのです。
「ちぃちゃん・・・・・・消えた?」と独り言を言うと視界の隅に女の子が立っていました。

口をぱくぱくしている女の子。
中3の頃見たちぃちゃんでした。

女の子の口パクは僕の脳で言葉へと変換されます。
自然に僕の口からは「ちぃちゃん」と漏れるように言葉がでてきました。
女の子の口がつり上がって行くのが分かります。

僕は静かに目を瞑りました。

ついにこの時が来たのかと。
薄目で見てみると女の子は消えていました。

僕は「あぁ憑かれた」と認識し、体中から脂汗が滲んできました。
できれば6年前のことは認めたくありませんでした。
しかし、あの女の子は少しずつ確実に僕の命を奪っていくのです。
一歩も動けない僕を尻目に日はジリジリと僕の肌を焼いていました。

日が落ちて夕食を食べた後、母は仏様にお祈りしようと僕に勧めてくれました。
「いい、早よ寝るよ」と断り、僕は煙草を1本だけ吸うと布団に体を沈めると静かに目を瞑りました。
手に数珠を握りながら。

今までのことが浮かんでは消えていきました。
そして僕は決心しました。
Tのことを見逃してくれるようと。
その時の僕はまだ死から目を背けるよう意識していたのだと思います。

突然「ピシッ」っと音がしました。

その音で目が覚めた僕は数珠を握りしめようとして驚愕しました。
音の正体は数珠にヒビがはいる音だったのです。
ピシッピシッと割れていく数珠はついに粉々に砕けてしまいました。

次の瞬間ドンっと重い物がのしかかったように体が動かなくなりました。
必死に金縛りを解こうと僕は体に力をいれますが、全くと言っていいほど動きません。

「ちぃちゃん・・・・・・」

自分の口からでた声におもわず、はっとしました。

今の言葉は・・・・・・そう思った瞬間、視界に女の子が写りました。
今いる女の子は昼に見た女の子ではありませんでした。
あの時に見た肌が焦げ、髪の毛がかなり抜け落ちた女の子でした。

突然、頭に鋭い痛みを感じました。
女の子が僕の短い髪の毛をつかもうと、爪を立てて僕の頭を掻きむしります。

長い髪を引っ張られ泣き叫ぶKの顔を思い出し、背筋に寒気がはしりました。
女の子は口をパクパクして何か話しかけています。
その言葉は僕の頭に響いていきます。

昼に聞いた声とは違い、半分叫び声に近い声が僕の頭を駆けめぐりました。
女の子の爪はガリガリと掻きむしり、血が出てきたのが分かります。
突然女の子の手が止まり、別方向を睨みつけていました。
焼けただれた肌をこわばらせ「そこ」をみています。

僕はスッと体が楽になり、バッと体を起きあがらせます。
そこには、女の子はいませんでした。
女の子が見つめていた先にはおそらく母が置いていった札や数珠がありました。

母がいなかったら僕は・・・・・・そう思い胸をなでおろすと、ある疑問が浮かびました。

「あの女の子はTのとこに行ったのではないのか?」

その疑問は確信に変わろうとしていました。

僕は急いでTに電話をかけます。

「なんだよ、お前」Tの声は荒れていました。

「T、俺が渡した数珠持て!!」

唾を必死に飲み込み「女の子が来る」と言うと、「えっ?」と言ったTは「来るって・・・・・・」と、戸惑いながらポソッと何か言いました。

「なんてっ?聞こえんよ・・・・・・」というと「ちぃちゃん。」

その瞬間、Tの携帯が切れました。

全身が震え、その場に座り込んでしまいました。
Tはあの女の子に憑かれてしまったのです。
僕はTを助けることができませんでした。

夜はもう明けていて、都会では聞けなかった、鳥の声が虚しく響いていました。

僕は朝早く母を起こし、別れを告げて富山を出ました。
次に狙われるのはもう僕しかいないのだと思い、女の子の顔を思い出してしまいそうで身震いしました。

寝る前はTの身代わりになると言っていた自分を情けなく思い、ため息がもれました。
母が置いてくれた数珠を握りしめ家を出ようとすると、遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきます。

あれから5年が経ちました。

現在、26になった僕は全国を周りながら暮らしています。
お坊さんの話では、女の子は追いかけるのを諦めるのはしばらく先のことだそうです。
「1ヶ月に1回は住む場所を移りなさい。できるだけ離れてね」というと「力になれんですまんかった」と僕に言いました。

頭の傷のいくつかは今も残っています。
坊主頭ではその傷は目立ってしまいますが、命には代えられません。
家族とは会っていません。

病気がちだった父親は1年前、息を引き取りました。
親の死に目にもあえず、僕の歯車は少しずつ狂っていきます。
今は香川にいます。

数珠は少し古ぼけてきました。
今でもあのことは忘れません。
あの女の子の顔は今も鮮明におぼえています。
ちぃちゃんは今この時も僕のところへと向かっているのでしょうか。

おそらくちぃちゃんと呼ばれていた、あの女の子が富山に戻るのはまだなのでしょうか。
ちぃちゃんという言葉は今でも僕の頭に響いています。

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